2010年09月01日
続・尺八の音階を考える [ 尺八楽理 ]
以前、5つの調子のメジャースケールを使えるようにしたい、と書きました。しかし、最近ちょっと考えが変わってきており、エントリーにまとめてみたいと思います。内容が少々専門的になるのはご容赦下さい、音階は全て八寸管の場合です。
7音階スケールで複数のパターンを自由自在に扱えるのは理想としてはありますが、あまり実践的では無いようです。実際、Bruce Huebnerさんの「JAZZ SHAKUHACHI」教則DVDではペンタトニック(5音階)スケールを中心に解説しています。
同DVDを参考にすると、基本となるメジャーペンタトニックはGに始まり、基音を4度ずつ上げて最後はF#にまで達します。実に8つのキーを自在に吹きますが、Abから先はかなりキツいコトと、僕なりにはD調も必須と考えますから...
D → G → C → F → Bb → Eb
上記各音を基音にしたメジャーペンタトニックの6パターンを、まずはマスターするのがいいと思います(尺八の基本音階ではFがルートです、念の為)。コレは以前ご紹介した「表吹きや裏吹き」という概念ではなく、満遍なく扱えるようにしたいですね。
そしてこの時、各基音をルートとしたメジャーコードがバックに鳴っていると想定して吹くのが普通ですが、ピアノのJonathan KatzさんはHuebnerさんのご要望で、2ndをルートにした7(9)sus4コードを弾いています。
コレはシンコーミュージック社のギター教本「ペンタトニック虎の巻」で紹介されている「メジャー・ペンタ・スターティング2nd」スケールに相当します。同書より一部引用しますと...
「メジャー・ペンタの2ndをルートにモード転回したもので(一部略)『君が代』のメイン・スケールでもあります」とのコトで、非常にいいハーモニーを得られますね。メジャー系ですが、民謡的な響きにはなりません。
他にも学習しなければならないスケールは(都節音階や琉球音階を含めて)幾つかありますが、まずはココから始めてみるといいでしょう^^
参考:
Bruce Huebner & Jonathan Katz, Jazz Shakuhachi Video
シンコーミュージック社ペンタトニック虎の巻
投稿者 鈴木幻山 : 11:09 | コメント (2) | トラックバック
2007年05月05日
尺八の音階を考える [ 尺八楽理 ]
いつものカフェ・ブルージュで、バンドをバックにドンパン節を吹くコトがあります。今までなんとなく演奏していましたが、ママにキーを尋ねたらFだとのコト。一尺八寸管で所謂「ロツレ音階」の曲は、実はF(ツ)を基音とした「ツレチハロ音階」「ツ調陽旋法」というコトになりそうです。また、Fメジャースケールは「ツレチほハロつツ」ですが、日本的な音階とされるヨナヌキにすると「ツレチハロ」となりますから、ツが基音と考えて間違いないと思われます(表記は「ウェブ尺八記譜法」による)。
ピアノに併せて民謡尺八を吹く人はなかなかいないと思いますし(笑)、民謡に於いてキーは一本二本…で表しますから(八寸管の表吹きが六本で一寸長くなるごとに一本少なくなる)、西洋音階と結びつけるのはナンセンスなのかもしれませんが、やはり自分が演奏する楽曲のキーくらいは知っておきたいものです。しかし、ツが基音だからツレチ音階だと書いたら混乱するだけなので、「ロツレ(ツ調)」のように表現したいと思います。
さて、民謡尺八の「表吹き」は所謂「ロツレチハ音階(ツ調)」です。女性の唄い手との合奏では、多くの場合一尺八寸(六本)から一尺六寸管(八本)の表吹きでの演奏になります。男性との合奏では完全四度下の「チハロつレ音階(ハ調)」となる「裏吹き」が多く使われます(一本から三本)。都山流尺八民謡集によると、その他の裏吹きとして「レほハロツ音階(ハの半音調)」や「ハっツレほ音階(ツの半音調)」も使われるとのコト。しかし、個人的にはツの半音調は七孔でないと使い辛いと感じます。
邦楽ジャーナルの2003年11月号に「アドリブ 教えて下さい!」という記事がありました。この中で、小湊昭尚さんが「一本の尺八を五つのパターンで吹き分けている」と解説されています。それぞれ「ツレチほハロつツ(F調)」「ハロつツレチはハ(C調)」「ほハロっツレチほ(Bb調)」「レチはハロつれレ(G調)」「ロつれレチはひロ(D調)」となり、最初の3つまではヨナヌキ(太字)にすると上記民謡の音階と共通します。
ジャンルに拘らずに尺八を吹く人は、12音階全てのメジャースケールを吹けるように練習するべきなのでしょうが、最低でもこの5つのパターンは自由に使えるようになりたいものです。民謡で使う音階の練習にもなるワケで、表や裏とかではなく、満遍なくトレーニングしたいですね。
関連:
続・尺八の音階を考える
表吹きと裏吹き
2007年04月19日
表吹きと裏吹き [ 尺八修行 ・尺八楽理 ]
菅原五郎先生に民謡尺八の基本を教わり、とりあえず「都山流尺八民謡集(上巻)」を購入しお稽古しています。まずは「ドンパン節」をちょっと練習し、課題曲として「秋田船方節を演りましょう」と言い渡されました。同曲は上巻に含まれていないので、結局「中巻」と「下巻」も購入です。
そのつもりで練習していたのですが、「小野花子さんに船方節はまだ早いと言われてしまって...」とのコト。確かに繰り返しが少なく、唄と尺八がピッタリ合うタイプの曲ではないので、難しいとは思っていました。しかし、それより驚いたのが、先生方お二人で僕の民謡修行について話しをしたり気に掛けて貰っていた、というコトです。本当に有り難いお話し。結局当面は「生保内節」や「長者の山」あたりを練習するコトになりました。
さて、都山流尺八民謡集に「表吹き」と「裏吹き」の解説があります。通常使われる陽旋法の「ロツレチハ」音階の他に五度下の「チハロつレ」音階等を使うコトができるというものですが(表記は「ウェブ尺八記譜法」による)、尺八の長さが合わない場合の緊急用だと思い込み、別に気にしていませんでした。しかし先生に、「裏吹きというのがあって、男性の唄と合わせる場合は殆どそっちを使います」と言われて大慌て。結構大変ですね、民謡尺八は甘くないです(汗)。
関連:
尺八の音階を考える
続・尺八の音階を考える